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数字で見る楽天・松井不振の要因

 楽天の松井裕樹投手が開幕から苦しんでいる。昨シーズンまで3年間にわたってクローザーとして活躍し、通算100セーブまで残り4として開幕を迎えた松井。山口俊投手(巨人)の持つ25歳1か月という史上最年少での100セーブ達成を射程圏内に捉えており、現在22歳の松井が開幕から間もなくしてこの記録を塗り替えるだろうとみられていた。

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 しかし、シーズン開幕戦となった3月30日の千葉ロッテ戦での救援失敗を手始めに安定感を欠いた投球が続き、ここまですでに3敗を喫してセーブは2つのみ。防御率は6.00。プロ入り以来4点台の防御率を記録したことのない松井にとって、信じられないような数字が並んでしまっている。

 昨シーズンは故障離脱がありながら52試合に登板して防御率1.20という数字を残し、51試合目まで防御率0点台(0.52)を維持する抜群の安定感を誇った左腕はなぜ不振へと陥ってしまったのか。今回はセイバーメトリクスで広く用いられる2つの指標によって松井投手の今季の投球内容を分析し、その原因について考察していきたい。(※数字は全て5月8日終了時点でのもの)

 まず、奪三振数を与四球で割って求める「K/BB」という指標について見ていきたい。松井投手がプロ入り後の5年間で記録したK/BBは以下の通りとなっている。

K/BB
2014年 1.88
2015年 3.68
2016年 1.88
2017年 2.38
2018年 1.56

 参考までに、昨シーズンのパ・リーグで各球団の抑えを務めた選手の2017年のK/BBは以下の通り。(カッコ内は今季の数字、メジャー移籍の平野は除く)

増井浩俊 7.45(3.50)
内竜也  1.57(6.00)
増田達至 4.46(2.00)
平野佳寿 2.94
サファテ 10.20(3.00)

 K/BBは、一般的には3.50を上回れば優秀、1.50を下回ると不安視されることが多いと言われている。松井はこれまでも四球でランナーをためながら後続を断っていくケースが多かったため、毎年投球イニングを上回る奪三振数を記録しながらK/BBは伸び悩んでいた。しかし、5月8日時点での1.56という数値は明らかに低迷しているといえるもので、14奪三振・与四球9というところにも投球内容の悪さが表れているのかもしれない。

ここまでの松井は運に恵まれていない?

 続いて、本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を示す「BABIP」という指標も見ていきたい。BABIPはその性質上投手がコントロールできる余地が少なく、一般的に運の絡む要素が大きいとされている。

 松井がプロ入り後の5年間で記録したBABIPは以下の通り。

2014年 .294
2015年 .230
2016年 .283
2017年 .248
2018年 .434

 上記の数値を見てもらえばわかる通り、今季は例年に比べて数値が1割以上も跳ね上がっている。もちろんこの指標は運のみならず投手の投球内容や野手の守備力などにも左右されるため、チームの不振も相まって一概に定義はしづらいところがある。それでも、今季の松井が運に恵まれていないと判断できる材料とはなるはずだ。

 上記の指標2つを見る限りでは、今季の松井は四球で走者を出すことが多いにも関わらず、三振によって独力でアウトを取る機会が少なく、フェアゾーンに飛んだ打球が安打になる確率も高くなってしまっていることによって成績が悪化していると推測できる。すなわち、持ち前の奪三振力が回復し、制球力が例年レベルまで向上してくれば不振脱出につながる可能性が高いのではないだろうか。

 4月後半の2試合ではランナーをためながらも無失点リリーフを見せ、少しずつではあるが復調の兆しを見せ始めている松井。このまま若き絶対的守護神が本来の姿を取り戻せば、昨季の安定感が失われている楽天のブルペンにも一筋の光が差してくるはずだ。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180509-00127770-fullcount-base